最近、SNSで「ギュられる」という言葉を見かけるようになりました。
「ギュられる」とは、シンギュラリティの「ギュ」に、受け身の「られる」を付けたネットスラングです。
AIの進化によって、自分の仕事、役割、スキルが代替されたり、価値を失ったりすることを指します。
まだ一般的な経済用語ではありません。しかし、AI時代の不安をよく表している言葉だと思います。
これまでAIは、どちらかと言えば「便利なツール」として語られてきました。
文章を作る、画像を作る、コードを書く、資料を要約する。使いこなせば仕事が速くなる。そういう前向きな文脈が中心でした。
しかし、次の段階では話が変わってきます。
AIを使って仕事が速くなるなら、企業は当然こう考えます。
「同じ仕事を、もっと少ない人数でできるのではないか」
ここから出てくるのが、いわゆるAIリストラです。
各国のAIリストラの動向
米国では、すでにこの動きが現実化しています。アマゾン、メタ、オラクルなど、テック大手を中心に人員削減が相次いでいます。
もちろん、すべてのリストラがAIだけを理由にしたものではなく、コロナ禍での過剰採用、金利上昇、事業再編、株主からの利益率改善圧力もあるようです。
ただ、AIによって「少人数で同じ成果を出せる」という考え方が強まっているのは間違いありません。
つまり、AIは単なる新技術ではなく、企業のコスト構造を変える存在になり始めています。
一方、中国では少し違う動きも見えます。法的にAIへの置き換えだけを理由にした解雇は違法・制限する姿勢を示しています。
米国のように企業の効率化を最優先するのではなく、若年失業や社会安定を意識しながら、AI導入と雇用維持のバランスを取ろうとしているように見えます。
では、日本はどうでしょうか。
日本の場合、米国のように一気にホワイトカラーを削減するというより、
建設、介護、宿泊、飲食、ITなど多くの分野で人手不足が続いていることもあり、まずは人手不足を補うためのAI導入が進みやすいと考えられています。
そのため、日本では「仕事が一気になくなる」というより、「AIを使える人と、AIに置き換えられる人の差が広がる」という形で進むのではないでしょうか。ただ日本でもホワイトカラーの仕事は徐々に置き換えられやすいと思います。
サラリーマンとして気をつけること
ここで大事なのは、年齢ではありません。
若手だから安全、ベテランだから危ない、という単純な話ではないと思います。
危ないのは、定型的な作業だけをしている人です。資料をまとめるだけ、議事録を作るだけ、過去データを転記するだけ、決まった文章を作るだけ。
こうした仕事は、AIによって急速に代替されやすくなります。
逆に強いのは、AIを使って判断や提案の質を上げられる人です。
顧客の課題を理解する。現場の事情を読み取る。複数の利害関係者を調整する。最後の責任を取る。
こうした仕事は、デジタルだけでなくリアルを踏まえてアウトプットをだすので、AIだけでは簡単に置き換えられません。
むしろ、AIを使える人ほど生産性が上がり、評価されやすくなるはずです。
では、投資家としてはどう見るべきか。
私は、AIによる「ギュられる」時代は、株式市場にとって大きなテーマになると考えています。
まず恩恵を受けるのは、AIインフラ企業です。半導体、データセンター、クラウド、電力、通信設備など、AIを動かすために必要な企業です。
AIの利用が広がれば広がるほど、計算資源と電力需要は増えていきます。
茲許の日経平均株価をリードしているのはまさにこの領域ですよね。
次に恩恵を受けるのが、AIを使って利益率を上げられる企業です。
人件費を抑えながら売上を伸ばせる企業、少人数で大きな事業を回せる企業、既存業務を自動化して営業利益率を改善できる企業です。
一方で、注意したいのは、AIに代替されやすい業務を大量に抱えている企業です。
単純な事務処理、コールセンター、定型的な制作業務、単価の低い受託開発などは、価格競争が厳しくなる可能性があります。
つまり、AI時代の投資では、「AI関連銘柄かどうか」だけではなく、
その会社がAIで利益率を上げる側なのか。
それとも、AIによって価格を下げられる側なのか。
ここを見る必要があります。
高配当株投資家としても、この視点は重要です。
配当利回りが高くても、事業そのものがAIに押し流されるなら危険です。
逆に、地味な会社でも、AIを使って人手不足を補い、利益率を高め、安定して増配できるなら魅力があります。
これからの時代は、単に「高配当だから買う」ではなく、「AI時代でも稼ぐ力が残るか」を見る必要があります。
ギュられるのは、人だけではなく、企業も、事業モデルも、株価も、AIによってギュられる可能性があります。
だからこそ、投資家としては、AIに仕事を奪われる側ではなく、AIを使って収益力を高める企業を選びたいですね。

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