日米協調介入でドル円が変動~米国が動いた理由と過去40年の介入史

資産形成コラム

7/31、歴史的な出来事がありました。

日米両政府が円買いの協調介入を実施しました。

日本と米国が協調して為替介入を行うのは、2011年の東日本大震災後の円売り介入以来です。さらに、円買い方向での協調介入に限れば、1998年の金融危機時以来、約28年ぶりというかなり異例の事態です。

私自身、ドル建て資産も保有しているので、今後の円相場の動きは他人事ではありません。

今回は、過去40年の介入の歴史も含めて整理してみます。

過去40年の為替介入を振り返る

今回の介入がどれだけ異例なのかを理解するために、主な為替介入の歴史を一覧にしてみました。

介入・政策対応介入方向当時のレート感背景・目的
1985年G5協調、プラザ合意ドル売り・円買い方向240円台から円高へ米国の貿易赤字、ドル高是正
1987年ルーブル合意ドル安定化150円台プラザ合意後のドル安・円高の行き過ぎを抑制
1995年日米協調介入ドル買い・円売り79円台
急激な円高阻止
1998年日米協調介入ドル売り・円買い140円台アジア通貨危機後の円安阻止
2001〜2004年日本単独ドル買い・円売り115〜135円台
デフレ・景気悪化への対応、円高阻止
2011年G7協調介入ドル買い・円売り76円台東日本大震災後の急激な円高阻止
2022年日本単独ドル売り・円買い145〜152円台
約32年ぶりの円安水準への対応
2024年日本単独ドル売り・円買い160円台
約34年ぶりの円安水準への対応
2026年7月日米協調介入ドル売り・円買い164円台から円高方向へ40年ぶりの円安水準、円の過度な変動への対応

この表を見ると、2つのことが読み取れます。

ひとつは、円買い方向で米国が協調するのはかなり珍しいということです。

日本が単独で円高を止めるためにドル買い・円売り介入を行うケースは過去にもありました。一方で、円安を止めるための円買い介入に米国が協調するのは、1998年以来の出来事です。

もうひとつは、市場が意識する円安水準がだんだん切り下がっているように見えることです。

2022年は145円台。
2024年は160円台。
そして今回は164円台。

もちろん、政府が明確な防衛ラインを示しているわけではありません。ただ、円安が進むたびに「この水準では介入があり得る」という市場の警戒ラインが円安方向に移っているようにも見えます。

ここは少し気になりますね。

164円台で動いた理由は・・・

円相場は7月下旬に一時1ドル164円台まで下落し、およそ40年ぶりの円安水準にありました。

以前のブログでも書きましたが、「40年ぶり」という数字は額面通りには受け取れません。

1980年代の160円と、2026年の160円台では、物価水準がまったく違うからです。

たとえばビッグマック価格でざっくり見ると、2026年の日本のビッグマックは500円、米国は6ドル台前半です。単純計算では1ドル80円台前半くらいが目安になります。

もちろん、ビッグマック指数は単一商品の比較なので、これを「本当の適正レート」と言い切ることはできません。

ただ、実勢レートが160円台ということは、生活者の実感としてはかなり円が安い。輸入品、食料、エネルギー、海外旅行、留学費用などに円安の影響が強く出ます。

今回の介入は、こうした円安の痛みがかなり強くなったタイミングで行われた気がしますね。

日本政府の見解

財務相は、米国東部時間7月31日に米財務省と協調して円買い介入を実施したと発表しました。

理由として挙げたのは、最近の円の過度な変動や無秩序な動きへの対応です。

また、今後も必要であれば、さらなる協調介入を実施することも躊躇しないという姿勢を示しています。

為替介入は、基本的には急激な変動を抑えるためのものです。

特定の為替水準を守るというより、短期間で一方向に動きすぎることを防ぐ。今回もその文脈で説明されています。

ただ、今回が特別なのは、米国が協調したことで、ここが大きいと思っています。

米国が動いた理由、友情!?

今回、米国側も友情のため?というワードも添えて円買い介入に協調しました。なぜ米国が動いたのか。

表向きには、為替市場の無秩序な動きへの対応です。日本を支援する同盟国としての姿勢もあるでしょう。

ただ、それだけではないと思っています。

米国が動いた背景には、少なくとも3つの理由があったのではないでしょうか。

1.製品価格競争力の問題

円安が進むと、日本製品は米国から見て相対的に安くなります。

特に自動車や機械、電子部品などでは、日本企業の価格競争力が高まりやすくなります。

一方、米国側から見ると、円安は米国製造業にとって逆風になります。

トランプ政権が米国製造業の復活を掲げていることを考えると、行き過ぎた円安は米国にとっても好ましくない面があります。

つまり、円安は日本だけの問題ではなく、米国の産業政策とも関係してくるわけです。

2.米国債売却リスクの回避

日本は世界最大級の米国債保有国です。

円買い介入を行う場合、日本は外貨準備のドルを使って円を買います。そのドル資金をどう用意するかが問題になります。

もし大規模な介入のために日本が米国債を売却すれば、米国債市場に影響が出る可能性があります。

米国債が売られれば、債券価格は下がり、金利には上昇圧力がかかります。

米国にとって、これは避けたいシナリオです。

そこで重要になるのが、FRBのFIMAレポ・ファシリティです。

これは、外国の中央銀行や通貨当局が、FRBに保管している米国債を担保に、一時的にドル資金を調達できる仕組みです。

つまり、日本が米国債を売却しなくても、ドル資金を確保しやすくなる。

今回、この仕組みの活用や活用可能性が示されたことはかなり重要だと思います。

単に「日本を助ける」という話だけではなく、米国債市場を守るという米国側の現実的な利益もあったのではないでしょうか。

3.米金利上昇への波及防止

円安が進むと、日本国内では輸入物価が上がり、インフレ圧力が強まります。

そうなると、日銀の利上げ圧力も高まりやすくなります。

日本の金利が上がると、日本の投資家が海外債券から国内債券へ資金を戻す可能性も出てきます。

その結果、米国債への需要が弱まり、米金利上昇につながるリスクがあります。

つまり、円安は日本の問題に見えて、実は米国債市場や米金利にも波及し得る問題です。

米国が協調介入に動いた背景には、この金融市場全体への波及を防ぎたいという意図もあったのではないかと思っています。

介入の効果はどこまで続くか

では、今回の介入で円安の流れは変わるのでしょうか。

正直、ここは慎重に見ています。

為替介入は強いメッセージになります。特に今回は米国も協調しているので、日本単独介入より市場へのインパクトは大きいと思います。

ただし、介入はあくまで「時間を買う」もので、構造的な円安要因を消すのは難しいと思います。

日米金利差。
日本の財政拡張への懸念。
輸入物価の上昇。
日本から海外への資金流出。
日銀の金融政策正常化のペース。

こうした要因が残る限り、介入だけで円安トレンドを完全に止めるのは難しいと思います。

むしろ、今回の協調介入は「これ以上の急激な円安は許容しない」という強い警告と見るべきだと思います。

今後のプラン

今回の円高方向への動きで、輸出企業には短期的な逆風が出やすくなります。

自動車、電機、機械などは、円安が業績の追い風になってきた面があります。そこに円高方向の動きが出ると、株価には一時的にマイナス材料として受け止められやすいです。

一方で、内需系の銘柄にとっては、円安による輸入コスト上昇が和らぐ可能性があります。

食品、電力、ガス、小売、外食などは、円安によるコスト増に苦しんできました。円高方向に動けば、仕入れコストやエネルギーコストの面ではプラスに働く可能性があります。

金融株については、為替そのものよりも金利動向の方が重要だと思っています。

日銀の正常化が続けば、銀行にとっては利ざや改善の追い風になります。ただし、急激な円高で株式市場全体が崩れるような局面では、金融株も無傷ではいられません。

私自身は、日本株と米国株、円資産とドル資産を両方持つ方針です。

米国株やドル建て資産は、円高が進めば円換算の評価額が下がります。

ただ、それだけを見て右往左往するつもりはありません。

為替は読めませんので、全部を円に寄せるのでもなく、全部をドルに寄せるのでもなく、分散しながら長期で積み上げるのが現実的だと思っています。

※本記事は個人の投資記録と考察であり、特定の通貨・金融商品の売買を推奨するものではありません。